チッソと国の水俣病責任を問うシンポジウム 第3回 なぜ先にチッソの分社化救済か? 和解で終わらぬ水俣病

*清水唯史が実行委員として参加しています。


 水俣病で国の責任を認めた2004年の最高裁判決以降、不知火海沿岸では3万人余の未認定患者の存在が明らかとなり、第二次政治決着や司法和解が今春から始まっていますが、その全容はまだ公になっていません。そして、なおも継続する訴訟を通じて、私達は水俣病未認定問題の底の深さ広さを知らされます。胎児性をはじめとする認定患者の生活をめぐる問題も、患者自身や家族の高齢化とともに切迫の度を増しています。

 そんな中、加害者チッソの分社化を進める手続きは加速度的に進行し、近々にもチッソが環境大臣に特措法8条による事業再編計画の認可申請(特例ずくめの分社化を認め、子会社株売却後の水俣病責任をあいまいにする)の状況となってきました。形ばかりの社内HP上での計画概要掲載とメールの意見募集では被害者や地域住民の声は反映されません。

 水俣病の現在を正しく認識し、国やチッソにまっとうな責任を取らせるために、シンポジウムへのご参加をよびかけます。


日時:2010年11月3日(水=祭日)13:00~17:00(12:30開場)

会場:YMCAアジア青少年センター(在日韓国YMCA)9階国際ホール

   東京都千代田区猿楽町2-5-5(JR水道橋から徒歩5分/JRお茶の水から徒歩7分)

   TEL 03-3233-0611 参加費:500円(高校生以下無料)


《プログラム》(敬称略 順不同)

 ○講演「和解しない二つの訴訟の現状と展望」

  山口紀洋(溝口行政訴訟、互助会第二世代訴訟主任弁護士)

 ○あいさつ

  佐藤英樹(第二世代訴訟原告/水俣病被害者互助会会長)

  佐藤スエミ(被害者互助会)

 ○報告「認定患者の今後の補償や福祉の諸課題」

  谷洋一(被害者互助会事務局/水俣ほたるの家)

  加藤タケ子(水俣・ほっとはうす)

 ○特別報告「UNEPによる国際条約と水銀規制のNGO活動」

  安間武(化学物質問題市民研究会)

 ○報告「不知火海地域再生への活動報告」

  細谷孝(環不知火海地域再生研究会代表/中央大学)

 ○報告「チッソ分社化への意見」

  除本理史(同研究会/東京経済大学)

 ○緊急討論・アピール採択「加害者救済の先行は許されない」


懇親会 17:30~19:30 同センター2F・韓国料理レストラン「ノア」

                 

主催:チッソと国の水俣病責任を問うシンポジウム実行委員会 

   〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-21-7 静和ビル1A

   Tel/Fax 03-3312-1398(昼留守録)


協力:東京・水俣病を告発する会


〈資料〉

「株式売却踏み込まず チッソが再編計画概要公表へ」 熊本日日新聞 2010.10.19

 水俣病特別措置法に基づいて原因企業チッソが進めている事業再編(分社化)計画の概が18日、分かった。新たに設立する事業会社の株式配当を認定患者の補償や公的債務の返済に充てるとする一方、最終段階の株式売却には踏み込んでいない。チッソは今月末にホームページに概要を掲載し、広く意見を募る方針。

 チッソは、新たに設立する事業会社に対し、全事業の営業権や資産を譲渡。持ち株会社として新会社の全株式を保有する。新会社は従来事業に加えてエネルギーや環境など成長分野に投資。水俣を最重要拠点と位置付けて設備投資を加速する。

 患者補償や県に対する公的債務などは新会社の株式配当を原資に、従来通り支払いを継続。未認定患者救済策に伴う被害者や団体への一時金支払いは、国と県の金融支援で対応する。

 分社化は再編計画を環境相が認可し、裁判所が許可すれば可能。特措法は計画認可前に、被害者や水俣・芦北地域の住民らの意見を聴くなど地元の関与は盛り込んでいない。

 このため、小沢鋭仁前環境相は7月にチッソを特措法の「特定事業者」に指定した際、再編計画策定に当たって関係者の意見を聴くよう要請。蒲島郁夫知事や宮本勝彬水俣市長も松本龍環境相に対し、事前の情報共有と公表を求めていた。

 ただ、特措法で再編計画への記載が義務付けられている事業譲渡の時期や保有する新会社の株式評価額などが、公表される概要に盛り込まれるかどうかは不明。「チッソが責任を全うする計画になるのか」と不安を訴える被害者らに十分応えられるかどうかは不透明だ。(亀井宏二、楠本佳奈子、渡辺哲也)


 チッソHPの「事業再編計画」は以下のサイトです。一般の意見を募っています。

http://www.chisso.co.jp/jigyosaihen/index.html


 このままでは、先の責任が不透明のまま「チッソ救済」(事業会社の免責切り離し)が先行してしまいます。私たちは、この件について以下のような意見をチッソに送りました。賛同してくださる方は、論旨のコピーや切貼りもかまいませんので、同サイトの「ご意見はこちら」欄から意見を出して頂けるとありがたいです。

 チッソと国の水俣病責任を問うシンポジウム実行委員会

 東京・水俣病を告発する会


「貴社の事業再編計画に対する意見」

 水俣病に心を痛めてきたものとして、また国税納付者としても、以下の理由で貴社HP掲載の事業再編計画に賛同できないことをお伝えします。

 今般の被害者救済(第二次政治決着と司法和解)が5月から始まったばかりで、被害者数や賠償総額の全貌はまだ見えていません。その間、新会社設立などの動きを控えるのは最低限の倫理です。今般の一時金には国から全額融資があり、チッソの経営を直撃するわけではないのでなおさらです。

 計画に「事業会社株の売却」は書いてありませんが、貴社が最後まで持株会社を貫くのならそれを明言すべきです。チッソの清算消滅が許されないことはもとよりですが、新事業会社についても、一回の株売却のみで以後の補償財源から切り離すことは容認できません。

 水俣の患者・住民に、このパブリックコメント方式はなじみがなく、インターネットのみで意見聴取終了とするなら著しく道義に反します。少なくとも、患者団体、熊本県知事と県議会、水俣市長と市議会には貴社の責任者が足を運び、直接話を聞くべきです。

 貴社後藤会長が社内誌で「水俣病の桎梏からの解放」を謳って環境大臣から1月に注意を受けたばかりです。水俣病問題からの撤退を急いでいるかに見える拙速な対応は、貴社の信用にもかかわります。


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