チッソと国の水俣病責任を問うシンポジウム 第2回 特別措置法による加害者免責は正しいか?

*清水唯史が実行委員として参加しています。


 水俣病で国の責任を認めた2004年の最高裁判決以降、不知火海沿岸では3万人余の未認定患者の存在が明らかとなり、その補償・救済が焦眉の急となっています。しかし、前政権の末期、条文の大半を加害企業チッソ救済に割いた「水俣病特別措置法」が、ほとんど審議なしに衆参両院で可決成立してしまいました。以後私たちは各分野の研究者や水俣の皆さんと共に法律を分析検討し、この特措法がJAL等の再生策と比

しても著しくチッソに甘く、経済社会の常識を逸脱する希代の悪法であるとの疑念を一層深めています。

 政権交代後、司法和解や政治決着が進められていますが、「特措法」のチッソ免責条項について見直しの動きはありません。よって、政府首脳による5月水俣訪問の以前に、急遽、シンポジウムを再び設け、分社化による一度の株売却と引き換えにチッソを免責することが許されるのかを世に問う次第です。水俣では、患者団体が共同で、チッソ免責により今後の未認定患者への補償が立ち行かなくなることについて「人権救済の申し立て」が日弁連に提出されました。

 むろん、補償・救済が未認定被害者の意に叶う方向で進められるか否かも重要で、この点については地元報道の視点から詳細な報告を受けます。そして、「加害者の免責救済が患者補償に先行・並行することを食い止め、チッソに企業責任を果たし続けさせるにはどうすればよいか」を、他の公害・薬害事例の報告も受けながら検討します。

 水俣病に心を寄せる多くの皆様はもとより、CSR(企業の社会的責任)について関心や意見をお持ちの方も、ぜひご参集下さい。環境省・チッソ等、関係者のご参加も歓迎です。企業や政府の、水俣病責任の正しい果たし方を、共に考えましょう。


日時:2010年4月3日(土) 午前の部:10:00~12:00/午後の部:13:00~17:00

会場:YMCAアジア青少年センター(在日韓国YMCA)9階国際ホール

   東京都千代田区猿楽町2-5-5(JR水道橋から徒歩5分/JRお茶の水から徒歩7分)

   TEL 03-3233-0611

参加費:1,000円(学生半額/午前のみ参加者は資料代200円)


《プログラム》(敬称略 順不同)

午前の部:

 ○特措法学習会

  講師 除本理史(環境経済学/東京経済大) 永松俊雄(行政学/室蘭工業大)

     松田健児(英米法/創価大)


午後の部:

 ○上映「環境省・チッソ要請の記録ビデオ」(2.1ほっとはうす、3.3被害者互助会)

 ○お話

  加藤タケ子(ほっとはうす施設長) 遠藤邦夫(水俣病センター相思社)

  佐藤スエミ(水俣病被害者互助会) 谷洋一(水俣病被害者互助会事務局)

 ○講演

  水俣病司法和解と政治決着の現在…1995年との比較

  講師 高峰武(熊本日日新聞論説委員長)

 ○特別報告1

  大日本製薬のサリドマイド責任

  講師 川俣修壽(ジャーナリスト)

 ○特別報告2

  クボタのアスベスト責任

  講師 片岡明彦(関西労働者安全センター)

 ○パネル討論

  チッソに企業責任を果たさせる方策について

  司会 細谷孝(シンポ実行委代表/中央大)

     午前午後の講師の皆さんで討議します

 ○アピール提案

  シンポジウム実行委員会


懇親会:17:30~19:30 同センター2F 韓国料理レストラン「ノア」(会費4,000円/貸切)


主催:チッソと国の水俣病責任を考えるシンポジウム実行委員会

   〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-21-7 静和ビル1A 03- 3312-1398(久保田)



チッソと国の水俣病責任を問うシンポジウム アピール


 現在、未認定患者の補償救済が焦眉の急となっています。しかし、この「未認定問題」は、被害者や関係者の献身によって世に発現したものにほかならず、その契機となった関西訴訟最高裁判決も、国の認定基準で棄却された患者が長年の苦闘を経てやっと勝ち取ったものです。行政やチッソによる被害者査の懈怠が、問題をここまで長引かせた大きな原因であることを、私たちはまず指摘せねばなりません。

 そして、今なお名乗りを上げていない潜在患者が多数存在することは「住民大検診」でも明らかになりました。第二世代も含めた健康被害の全貌は未解明で、胎児性をはじめとする認定患者の加齢に伴う症状悪化も懸念されます。ヘドロ埋立地の継続的監視なども含め、水俣病には、将来にわたって恒久的に対処すべき課題が山積しており、国とチッソは今回の司法和解と第二次政治決着をもって水俣病のすべてが解決するわけではないことを銘記すべきです。

 そのように考えるとき、患者補償の原資調達や公的債務の返済を理由に、加害企業チッソを分社化と一度の株売却で免責することは決して許されるものではありません。水俣病特別措置法はその点で憲法に抵触する疑いがあり、CSR(企業の社会的責任)やPPP(汚染者負担原則)にも違背しているのではないでしょうか。

 私たちは昨年夏の特措法施行以来、とくにこの点を批判し、加害企業の責任のあり方について考察し続けてきました。この問題では日弁連からも意見書が出、被害者から人権救済の申し立てもなされており、今後もさまざまな提言や注文が出されることは必至です。国とチッソは、それらを受け止め、加害責任を最後まで全うする方向へと姿勢を転換し、法の不備を改め補う施策を行なうべきです。

 よっていま緊急に、以下の実行実施を強く求めます。

一、被害者より先に加害者が免責されることなどあってはなりません。少なくとも司法和解と第二次政治決 

  着の対象被害者数と補償が確定するまでの間、チッソ分社化手続きは一切を凍結すること

二、総理大臣や環境大臣が5月1日に水俣を訪ねるに際し、以下二点を国として真摯に表明すること

 (1)国は、最後まで水俣病患者・被害者の補償救済に責任を負い、汚染地域住民の不安解消に努め健康管

    理や環境保全に力を尽くす

 (2)加害企業チッソに対しても、最後まで、同様に、水俣病患者補償や地域貢献の責任を取り続けさせる

2010年4月3日


「特措法による加害者免責は正しいか? チッソと国の水俣病責任を問うシンポジウム」 参加一同

連絡先:チッソと国の水俣病責任を問うシンポジウム実行委員会

代表:細谷孝(中央大学)

事務局:久保田好生(季刊「水俣支援」編集部)


環境大臣 小沢鋭仁 様(4月5日 13:30 事務次官室で提出)

※鳩山由紀夫内閣総理大臣あてには内閣府気付で郵送


実行委:細谷孝(中央大学) 久保田好生(事務局) 白木喜一郎 奥田みのり 清水唯史 川尻千津 

    アイリーンスミス 桑原史成

水俣・被害者互助会:佐藤スエミ(患者) 谷洋一(事務局) 伊藤紀美代(事務局)

水俣・ほっとはうす:長井勇(胎児性患者) 加藤タケ子(施設長) 永野ユミ(理事)

水俣・相思社:遠藤邦夫

車イス介助:中島聡


 

水俣

Top  □News  ■Events □Contact Us